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〔地域に活力〕規模生かしつつ地域密着営業を強化=埼玉県信用金庫・橋本理事長

2017/01/23 株式会社 時事通信社
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埼玉県信用金庫(さいしん、埼玉県熊谷市)は、2016年3月末の預金積み金残高が2兆5890億円、貸出金が1兆5189億円と、全国でも屈指の規模の信用金庫だ。営業基盤である埼玉県は、県内外のさまざまな金融機関が融資などでしのぎを削る激戦地。その中で、規模のメリットを生かしながら、地域金融機関の武器であるフェース・トゥ・フェースの営業にも力を入れ、生き残りを目指す。橋本義昭理事長は「地域の企業や住民に、何かあったら相談に行こうと思ってもらえるような『さいしんブランド』を打ち立てていきたい」と目標を語る。  ◇営業店の後方事務を本部に集中  「営業基盤である埼玉県は、約720万人の人口、約26万の民営事業所を抱え、市場としては非常に豊かだが、金融機関の競争が激しい。特に、地方銀行の攻勢が非常に厳しく、貸出金利の低下が避けられない状況だ。当金庫は01年1月に小川信用金庫から事業譲渡を受け、店舗網が県内のほぼ全域に拡大した。現在の預金量は約2兆6000億円、店舗数は96に達する。このスケールメリットを生かしつつ、一方で信用金庫の本来の強みであるフェース・トゥ・フェースの対応も強化していきたい」  「15年6月に企画担当役員から理事長に就任し、従来の方針をそのまま引き継いで、地域密着という地域金融機関の使命を果たすべく取り組んでいる。ただし、想定外のマイナス金利導入で、計画のスピードアップを図らなければならなくなった。低金利時代はしばらく続くとの見通しから、業務センターを立ち上げて、営業店の後方事務の本部への集中を進めており、余剰人員は営業に振り向ける。これを出の部分の施策とすれば、フェース・トゥ・フェースの強化が入りの部分の対策だ」  「私が当金庫に就職したころは、取引先の工場を訪問し、社長が働いている姿を見たり、その夢を聞いたりしながら、一緒に成長するというのが信用金庫職員の姿だった。しかし時代が変わり、決算書や格付けなどに基づいて融資の可否を判断するようになって、信用金庫の個性が薄れた。他金融機関との競争が激しくなる中、われわれの強みを生かすため原点に立ち返って顧客企業をもっと知るように努めようということになり、業界動向、取引先企業に影響を及ぼす事項、企業の強み・弱み、経営戦略など、担当者が聞き取った定性情報を記録する『課題把握シート』を作成した。これを実践していく過程で企業の課題が明確になり、50項目に分類した解決策の中から最適なものを提案・実行する『アクション50』に発展した。取り組みはポイント化し、業績表彰制度に取り入れて定着を図っている。金融庁が推進する事業性評価につながるものと思う」  「当金庫単独では、顧客企業の課題すべてには対応し切れない。そこで、信用金庫と産学官が連携して中小企業を支援する『コラボ産学官』の仕組みを活用しようと考え、06年3月に任意団体の『コラボ産学官埼玉支部』を設立した。10年目の節目を迎えた16年5月には、同支部を一般社団法人化した。協力してくれる大学を核に、地域の企業、国、地方自治体の連携を地道に後押ししてきたところ、顧客企業の中には発明で文部科学大臣賞を取るところも出てきた。特許庁は、地方で新規事業の創出を目指す事業プロデューサーの派遣先に選んでくれた。顧客企業からの信頼も高まったと感じており、将来的には総合研究所のような組織に発展すればいいと思う」  「クラウドファンディングにも積極的に取り組んでいる。小口の出資者を募ることで商品の販売先も確保できるという特徴を生かし、最初に手掛けたのは『深谷ネギファンド』。調達した資金でトラクターを購入し、深谷ネギなど品質の高い深谷ブランドの野菜を生産・販売するというものだった。また、秩父のブドウでワインをつくる取り組みも支援した。いずれのプロジェクトも地方創生につながり、行政や企業などの支援も得ることができた。16年4月には、寄付型のクラウドファンディングを使って、女子7人制ラグビーの強豪チームである『アルカスクイーン熊谷』の海外遠征を支援した。この仕組みを、NPOの活動支援などにも応用できないかと考えている」  ◇女性の活躍で投信残高トップに  「女性職員の積極登用も当金庫の特徴の一つだ。投資信託や保険の販売で実績を上げた女性職員がいたので、何人かを金融資産の運用アドバイザーとして教育し、営業店に派遣したところ、店舗の収益に大きく貢献した。そこで1店舗当たり2人の体制を目標に強化を図ってきたが、アドバイザーの経験を女性職員の昇格要件としたこともあり、手を挙げる職員が増えて、現在は300人程度に拡大した。アドバイザーと他の職員が協力し合うように、チーム単位で業績を評価するなどの工夫も加えた結果、全員営業体制が定着し、投信残高が業界トップとなった」  「一部のアドバイザーから、顧客にローンの説明もできるようになりたいと要望があった。そこで個人金融全般を任せようと考え、アドバイザー経験者を数人、ローンセンターに配属した。今では、ローンセンター長を務める女性職員も出てきた。また、男性と同様に渉外活動をしたいという女性職員には、支店長に昇格するコースも用意した。女性職員は業績に大きく貢献してくれており、今後も活躍を後押ししていきたい」  「15年6月に、当金庫としては初めてのビジネスフェアを開いた。各地の信用金庫の協力も得て全国の特産品を集め、一般消費者も受け入れるようにしたところ、来場者は約1万5000人と盛況だった。準備に手間をかけていることもあり毎年は難しいが、隔年で実施していきたい。18年2月に当金庫は創立70周年を迎えるので、ロゴや看板の変更など、イメージアップを図る周年事業を計画中だ。本店も建て替える。『100年続く価値の創造』を目指し、何かあったら相談に行こうと思ってもらえる『さいしんブランド』を打ち立てていきたい。職員に対しては、両親や子供など身内から『うちの家族はさいしんに勤めている』と誇りに感じてもらえるような信用金庫にしていこうと話している」  「全国に260余りある信用金庫は、規模によってビジネスモデルが大きく異なってきており、業界として一つにまとまって行動することは時代にそぐわなくなってきた面があると感じる。ただ、業務効率化などの面で信用金庫同士協力し合えることがあれば、積極的に提携していくべきだと思う」(2017/01/23-10:55)

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