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〔フィンテック最前線〕IoT普及で企業向け需要増大=太田ギフティ代表

2017/02/27 株式会社 時事通信社
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電子ギフトチケット事業を展開するギフティ(東京)の太田睦代表取締役は、インタビューに応じ、「モノのインターネット(IoT)」が普及するのに連れ、企業向けの需要が増大するとの見通しを示した。太田代表は「IoTの難所はデバイスをスマートフォンと一度連携させないといけないことだ」と指摘。「連携してくれたらギフトチケットを贈るという導入事例は増えるだろう」と語った。  主なやりとりは次の通り(インタビューは1月12日実施)。  -創業の経緯は。  創業は2010年8月。社名にGiftee(ギフティ)とある通り創業時からギフト関連サービスを手掛けている。実店舗で使えるチケットを紙ではなくデジタルの形にしてサイトで販売し、CtoC(一般消費者間)で贈るeギフトと呼ばれるサービスだ。国内のeギフトがなぜ韓国や米国に比べて普及していなかったかというと、単純に贈れるギフトがなかった。もちろんクオカードや図書カードはあるが、飲食・流通・小売企業で使えるデジタルチケットはあまりなかった。  このため、デジタルチケットの仕組みの提供や生成したチケットの弊社サイトでの販売を手掛けている。導入企業の特徴としては、実店舗を持って全国的に展開しているブランドが多い。チケットは500~600円で贈ることができるので、やはり飲食と相性がいい。  もともと創業したきっかけとして、私自身がインターネット交流サイト(SNS)のフェイスブック(FB)で大学時代や前職時代の友人とつながっていた。FBに「きょうは誰々の誕生日です」と出てくるが、メッセージの送付だけで済む相手ともうワンプッシュしたい相手がいて、そのときに取れる手段が少ないと感じていた。例えば、カフェで一杯コーヒーを飲めたり、アイスクリームのチケットを贈ったりできたらすごく面白いと考えてサービスを始めた。  実際に企業に営業に行くと、そもそもデジタルチケットの生成ができないところがほとんどだった。割引クーポンを出しているところは多いが、基本的に見せるだけなので、金券とは違い何回も使える。1回しか使えないような認証の仕組みを導入するには店舗に何かしらの端末を置かないといけないが、ほとんどの企業はそこまでは手が回らない状況だったので自分たちで始めた。  -利用状況は。  会員数は現在62万人に増えている。年代では20~30代が多く、購入者の7割くらいが女性だ。提供しているプラットフォームとして、ウェブに加えてiPhone(アイフォーン)やアンドロイド向けのアプリを提供している。ギフトの有効期限が近づいたときに、リマインドしてくれる機能もある。代表的な商品としては、スターバックスやローソンなど店舗が多い企業のチケットが好まれる。価格帯として数百円で贈れるところが人気が高い。  誕生日のプレゼントやお礼のシーンで贈られている。友人や取引先、カップルなど近しい間柄で、今まではメッセージで済んでいたシーンをリッチにしている。われわれの特徴はウェブでそのまま使えることだ。クレジットカードさえ登録していれば1分でチケットを贈れる。クレジットカード決済以外では、携帯電話料金と一緒に払う。  -企業側の導入メリットは。  まずこういった切り口で世の中に出すことによるギフト需要の創出だ。ギフトを贈る方は既存の顧客だと思うが、受け取る側はもらったことをきっかけに店舗に足を運ぶため、新規顧客の獲得につながる。来店につなげることで副次的に(商品を)購入してもらう効果もある。また割引クーポンを配布するとブランドイメージの毀損(きそん)が気になるという声があるが、ギフトの場合、割り引きしないのが基本なので定価で販売できる。ブランドを維持しながら集客できる。  -法人向けの販売は。  法人を対象としたギフトチケット販売「ギフティ・フォー・ビジネス」というサービスを展開している。企業としては、見積もりやアンケート回答への景品や謝礼をメールで送れるので事務手数料を下げることができる。保険会社や不動産業者、携帯電話ショップの導入が多い。  今後、「モノのインターネット(IoT)」のサービスが増えてくるが、IoTの難所はデバイスをスマホと一度連携させないといけないことだ。連携してくれたらギフトチケットを贈るという導入事例は増えるだろう。  -収入源は。  システム利用料という形で月額固定の手数料も頂いているが、基本的に発行金額に応じて課金している。弊社サイトだけでなく、外部の販売パートナーにも卸して、いろいろな媒体でチケットを販売できる形をとっている。全体の流通量が増えれば増えるほどシステム利用料が積み上がっていくビジネスモデルだ。  -電子地域通貨の展開は。  「しまとく通貨」は、もともとわれわれが関わる前から、長崎県が母体の「しま共通地域通貨発行委員会」が発行している。5000円支払うと20%のプレミアムがのって6000円分使える。基本的に来島者向けで、1人6セット(3万6000円分)を上限に購入できる。紙の時代は3年間で104億円の流通があったが、課題もいくつかあった。観光客しか買えないので購入のときに身分証のチェックが必要だ。船から下りたら長蛇の列ができており、せっかく島に着いてもすぐに観光に行けない。加盟店サイドでは、しまとく通貨を10枚ごとに束ねて換金所に持っていかないといけない。1カ月後に振り込まれてくるので、資金が一時的に不足するという課題もあった。また、紙だと誰が使ったかまでは紐付かないので有効なデータが取れなかった。  われわれと商品券の運用管理を手掛ける「J&Jギフト」の2社で、電子地域通貨サービスをつくろうということでスタンプをつくった。購入するときに列ができてしまうところに関しては、携帯電話から事前入力する形を取った。先に申し込み画面で名前や住所を登録しておくと申し込みIDが発行される。そのIDをベースに身分証のチェックをして、すぐにQRコードが発行される。これを読み込むと、しまとく通貨がデジタルで表示され、1000円単位で利用できる。  今までは港の近くの販売所まで行かないと追加購入できなかったが、身分証のチェックは済ませているので、クレジットカードでチャージできるようにした。発行委員会がどの販売所で誰に対していくら発行したかも、データで見ることができるし、来島者がどの加盟店でいくら使ったかもリアルタイム見ることができる管理画面を提供している。発行委員会が得る加盟店手数料2.5%を差し引いた金額が後日振り込まれる。全体で25%の経費削減になったという話もある。  -決済方法は。  加盟店が持っているスタンプを押して決済する。顧客が持ってきたスマホに直接押せる。仕組みとしてはスタンプの裏側に五つの点が入っており、押したときに5本指でスマホをタッチしたのと同じ状態をつくる。スマホでマルチタッチに対応していれば、基本的にどの端末でも使える。5点の座標と押された順番をサーバーに問い合わせるとスタンプIDが分かる。従来型携帯電話(ガラケー)や古いスマホには反応しないが、4ケタ認証も用意している。  スタンプは静電気で動くので電池はいらない。電源工事やインターネット工事は不要だ。今までは電子化するとしたらICカードしかなかった。通常のICカードリーダーはクレジット機能も加えると端末だけで15万円程度かかる。さらに電源工事や回線工事があると20万~30万円かかってしまうが、スタンプは数千円で購入できる。  -決済データの活用は。  まだ基本的な決済機能がスタートしたばかりだ。今後、誰がどこでいくら使ったかのデータを生かして次のサービスをつくっていく。例えば、一つのアイデアとして発行委員会が出しているのが、利用者の属性ごとに適した観光情報の提供だ。ガイドブックは全員に同じ内容を提供しているが、アプリのようなものをつくって、その人に合った情報をプッシュ配信することもできる。また、スタンプラリーのように、何店かで使うとさらに100円チャージするということもできる。(2017/02/27-13:13)

 

この記事の情報発信者

株式会社 時事通信社

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