飯盛みずほ信託銀社長インタビュー詳報
みずほ信託銀行の飯盛徹夫社長は、時事通信のインタビューに応じた。みずほグループでの自行の役割について「コンサルティング業務やプロダクツ提供を通じて、全体の収益を高めていく」と述べ、みずほ銀行、みずほ証券との連携をさらに深める考えを示した。さらに「持ち株会社の傘下でどこが収益を上げてもいい。こういう意識が各社に浸透してきた」と述べた。 -みずほ信託銀行の強みは。 五つの強みがあり、それを強化することがグループ戦略に資するという実感を持っている。 1点目はコンサルティング力だ。事業承継、資産承継に関するコンサルティング能力は極めて高いものがあり、これを起点にみずほ銀行、みずほ証券のビジネスに拡大していったという例が多々ある。 中堅企業が事業承継に悩んでいるとき、いかに円滑にコストをかけずに後継者に譲渡していくかを、信託銀行としてお手伝いする。例えば、その際につくられる資産管理会社に資金ニーズがあれば、みずほ銀行から融資することができる。 2点目の強みは不動産だ。3行ある大手専業信託銀行の中で規模は一番小さいのに、不動産の取り扱いや収益力は拮抗(きっこう)している。グループの顧客基盤を生かすことで、これだけ生産性が上がっている。 3点目は年金運用業務。(2016年10月に発足した資産運用会社アセットマネジメントOneに)株や債券の運用を移したことで運用機関ではなくなったため、アセットオーナーにより近い立場で、いろいろアドバイスできるようになった。フィデューシャリー・マネジメントという業務で活躍する余地ができた。年金分野において、これは機能強化になると考えているし、総幹事を新たに任されるなどの成果も出ている。 4点目は商品開発力。最後は新規株式公開(IPO)だ。 -他の信託銀行とどう差別化していくか。 グループ戦略だ。なぜ銀行、証券との連携がしっかりできているかというと、顧客セグメントごとに五つのカンパニーがあり、持ち株会社の傘下のどこで収益を上げてもいいからだ。 信託のコンサルティングが起点となって銀行、証券が大きな収益を上げているとすれば、信託で収益を出すことにはこだわらない。こうした意識が、過去3年間で各社に浸透してきた。 -銀行と信託を分けておく必要はあるのか。将来一つになる可能性は。 念頭にはあるが視野には入っていない。否定はしないけれども、今急いでやる必要があるとは思わない。 みずほフィナンシャルグループの大きな課題として、次期システムへの移行がある。移行が済めば、システムの自由度が非常に高くなる。(信託と銀行の統合を)検討する必要があれば、それから考えていけばいいと思う。 ただ、信託の自己資本利益率(ROE)は銀行と比べて高い。他のメガ信託と比べても高い。これをさらに強化すればするだけ、グループのROEにも貢献できるし、アセットを使わない収益なので自己資本比率にも大きく貢献できる。今やるべきはむしろ、グループ戦略の徹底を一層加速していくことだろうと思う。 -信託で勤務経験がないが、不安はないか。 私は1997年からの金融危機のとき、安田信託銀行(現みずほ信託銀行)を支援するプロジェクトチームの一員として、再建計画を練った経験がある。信託銀行での任務はないが、信託業務に対しては一定の経験がある。 信託に対しては当時から、わが国の抱える少子高齢化などの課題を解決する機能があるという可能性を感じていた。不安というより、むしろわくわくしている。(2017/04/05-00:22)
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