生活再建資金としての地震保険
『生活再建資金としての地震保険』
地震とは切っても切れない関係にある日本。地震への備えとして、各自が防災意識を持つことも重要ですが、経済面でのリスクヘッジの1つとして活用することができるのが地震保険です。
具体的に、どのように地震保険を活用すればいいのかを含めて、一般社団法人日本損害保険協会から全3回のシリーズでお伝えします。
第1回は地震保険のしくみと意義について考えていきます。
■地震保険の基本
地震保険とは、地震や噴火またはこれらによる津波を原因とする損害、つまり、地震による火災や家屋の損壊・埋没、津波による流失などに備える保険です。
地震保険は、単独で契約することはできません。火災保険とセットで加入することが必須条件となっています。地震などによる火災や損壊などは、火災保険ではなく地震保険で補償されます。
【火災保険と地震保険の補償対象】
※地震などにより延焼・拡大した火災損害も補償されません。
地震保険の対象となるのは、建物と家財。持ち家の場合は両方契約しておけばより安心ですし、賃貸住宅に住んでいる人も家財に地震保険を付けることができます。
契約金額(受け取れる金額の上限)は、火災保険の契約金額の30~50%の範囲内で設定すると定められています。また、契約金額の上限は、建物で5,000万円、家財で1,000万円までとなっています。
契約金額に上限があるのはなぜかというと、ひとたび地震が起きると、被害を受けるエリアが広く、損害額が膨大になる可能性があるからです。そのため、安定的に制度を運営するため、そのような制度設計になっているとお考えください。
そもそも地震保険は、被災者の生活の安定に寄与することを目的で創設されました。大きな地震に遭った場合、地震保険金だけで家を建て直すことはできないかもしれませんが、国からの支援金は最大でも300万円と限られているなかで、地震保険金は被災後の生活をスムーズに再建するために大きな役割を果たします。
地震保険は、被災者が少しでも早く安定した生活に戻るために使える資金を迅速に得られるという点に大きな意義があるのです。
■保険料は住んでいる都道府県と建物の構造で決まる
地震保険の意義を確認したところで気になるのは、毎月支払う保険料だと思いますが、地震保険は、保険会社間で補償内容や保険料に違いはありません。では、保険料はどのように決まるのでしょうか。
地震保険の保険料は、住んでいる場所と建物の構造、契約金額で決まる、とてもシンプルなしくみです。都道府県ごとの年間保険料例を以下表のとおりまとめました。
【年間保険料の例(契約金額100万円あたり)】<2017年1月以降始期契約>
(※)イ構造・・・主に鉄骨・コンクリート造の建物 ロ構造・・・主に木造の建物
(出典:日本損害保険協会パンフレットより作成)
この表を見ると、鉄骨・コンクリート造よりも木造、さらに、南海トラフ地震で影響を受けそうな地域の保険料が高くなっているのがわかります。
東京で鉄骨・コンクリート造の持ち家に住む人が、契約金額を2,000万円に設定したとすると、年間の保険料は2,250円×20で4万5,000円、つまり、1か月あたり3,750円と簡単に計算することができます。
なお、地震保険には、建物の免震・耐震性能などに応じた割引制度もあります。
■平成29年1月から損害の区分が4つに
地震保険では、保険金を迅速かつ公正にお支払いするために、損害の状況に応じて地震保険の契約金額の一定割合を支払う方法となっており、損害の区分を大きく4つに分けています。
【支払われる保険金の区分<2017年1月以降始期契約>】
※建物の損害額は、基礎・柱・壁・屋根などの主要構造部に着目して調査します。
(出典:日本損害保険協会パンフレットより作成)
この損害区分は平成29年1月に改正された最新のものです。従来と比べてどのような点が変わったのでしょうか。
これまでは、損害区分が全損、半損、一部損の3つに分かれており、それぞれ支払われる保険金は契約金額の100%、50%、5%でしたが、わずかな損壊割合の差で保険金に大きな格差(一部損と半損では10倍)がつくという財務省の有識者会合での指摘もあり、半損を大半損と小半損に分けて4つの損害区分として、より損害の実態に照らした保険金を支払えるようにしたことが今回の改正の趣旨となります。
第1回では、経済的な備えとしての地震保険の役割、契約金額の設定や保険料などの基本的なしくみについて紹介しました。
次回は、地震保険の加入率や過去の地震で支払われた保険金など、データ面から地震保険を考えていきます。
【01_地震保険を考える】
一般社団法人日本損害保険協会
この記事の情報発信者
日本損害保険協会は、損害保険会社を会員とする事業者団体です。 1917年 大日本聯合火災保険協会を起源として設立され、2017年5月で創立100周年を迎えます。日本における損害保険業の健全な発展及び信頼性の向上を図り、安心かつ安全な社会の形成に寄与することを事業目的としています。