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「トランプリスク」で先行き警戒=通期の上方修正相次ぐも-上場企業〔潮流底流〕

2017/02/09 株式会社 時事通信社
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上場企業の2016年4~12月期決算発表がピークを越えた。昨年11月の米大統領選後に為替相場が円安基調に転じたことなどから、輸出競争力が高まった自動車などを中心に、17年3月期(通期)の業績予想を上方修正する企業が相次いだ。ただ、トランプ米大統領が矢継ぎ早に打ち出す保護主義的な政策で、各社とも先行きが見通せず、警戒感が急速に広がっている。  ◇円安で回復  「為替変動を織り込んで上方修正する」。富士重工業の高橋充専務は8日の決算記者会見で、通期の利益予想の引き上げに関し、こう語った。英国が欧州連合(EU)離脱を決定した昨年6月に一時1ドル=100円を割り込んだ為替が、昨年11月以降は米新政権の経済政策に対する期待から円安に振れたのが主因だ。  時事通信社の集計によると、8日までに決算発表した東証1部の3月期決算企業925社(金融を除く)の16年4~12月期の経常利益は、上半期の円高の影響で自動車など輸出企業の採算が悪化し、前年同期比5.4%減少した。これに対し、通期の経常利益予想については、富士重のように上方修正する企業が185社で、下方修正の57社を大きく上回った。  資源価格の上昇も追い風だ。石油元売り大手のJXホールディングスや出光興産は、原油価格の値上がりで備蓄している石油の評価額が増え、4~12月期は純損益で前年同期の赤字から黒字に転換。大手商社でも通期予想の上方修正が相次ぎ、三菱商事や三井物産は資源安で創業以来初の赤字に転落した16年3月期から急回復する。  ◇保護主義台頭で暗雲  上方修正が相次いだことに関し、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里チーフストラテジストは「コスト抑制など経営努力による改善効果も大きい」と指摘。通期の企業業績は「(前期と比べ)増益になる可能性が高い」とみる。  しかし、企業の間では「トランプリスク」への不安が強まっている。トランプ大統領は、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明。メキシコから米国への輸出に高い関税が課されれば、メキシコに工場を構える自動車産業などへの打撃は大きい。新日鉄住金の栄敏治副社長は「就任前から保護主義的な発言が目立っていたが、日に日に懸念が増している」と日本企業への悪影響を心配する。  トランプ政権の影響について、トヨタの大竹哲也常務役員は「現時点で見通すことは難しい」と述べるにとどめた。一方、メキシコで自動車部品や空調機器を生産する三菱電機の松山彰宏専務は「関税問題が出てくると、生産拠点の見直しなどの対応を迫られる可能性がある」と話す。  トランプ氏が就任早々、日本の為替・金融政策を批判し、為替が大きく変動していることも、先行きの不透明感を高めている。「円安に動くのか円高になるのか分からない」(日本郵船の宮本教子経営委員)との声が漏れ、企業がトランプ氏の発言に神経をとがらせる状況が当面続きそうだ。

 

◇通期業績予想を上方修正した主な企業と想定為替レート

           通期純利益予想(億円)     想定為替レート(対米ドル)

トヨタ自動車   17,000(15,500)     107円(103円)

ホンダ       5,450( 4,150)     107円(103円)

富士重工業     2,900( 2,780)     108円(104円)

日立製作所    ※5,600( 5,400)     107円(102円)

パナソニック    1,300( 1,200)     108円(103円)

新日鉄住金       800(   600)    109円程度(103円程度)

三菱商事      4,400( 3,300)  108.76円(102.63円)

三井物産      3,000( 2,200)  108.17円(102.86円)

(注)カッコ内は従来予想。※は営業利益の修正 (2017/02/09-08:09)

 

〔写真説明〕2016年4~12月期連結決算について記者会見するトヨタ自動車の大竹哲也常務役員=6日、東京都文京区の東京本社

この記事の情報発信者

株式会社 時事通信社

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