残業抑制の動き広がる=インターバル制度導入も-大手企業
大手企業が残業抑制の自主的な取り組みを強化している。退社から次の出社まで一定の時間を空ける「インターバル制度」を導入する企業も増えてきた。年720時間(月平均60時間)の残業上限規制導入を目指す政府の働き方改革と併せて、長時間労働是正の動きが広がりそうだ。 残業抑制は、就労環境の改善で人材を確保するとともに、生産性向上を図るのが狙い。大手広告、電通の新入社員の過労自殺を受け、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を求める機運も高まっている。 あおぞら銀行は1月、午後8時以降の残業を原則禁止した。それ以降仕事をする場合は役員の承認を得なければならない。「メリハリをつけて働き、ワークライフバランスの充実を図ってもらう」(人事部)考えだ。 既に三井住友海上火災保険と神戸製鋼所は午後7時以降の残業を原則禁止し、大王製紙は同7時までの退社を促している。神戸製鋼は「優秀な人材の確保、定着には魅力的な職場づくりが重要だ」(秘書広報部)と指摘。同社の2016年度上半期の残業時間は前年同期から3割減った。 アステラス製薬は毎週金曜日を「ファミリーフライデー」として、定時より1時間45分早い午後4時に退社し、家族らと過ごすよう社員に奨励。労働時間が減っても給与は減っていない。 日本生命保険は4月、1日の労働時間を3時間半と通常の半分に抑える制度を営業職に導入する。育児や介護を抱える社員を支援するのが狙いで、年収は85%程度を維持できるという。 インターバル制度については、ユニ・チャームが今年1月に導入した。退社から次の出社まで8時間以上空け、働き過ぎを防ぐ。 エステティック業界大手のTBCグループ(東京)も昨年12月に導入。同社は「時間管理や休息取得の重要性を社員に意識してもらいたい」(幹部)と語る。 インターバル制度はこのほか、三井住友信託銀行、三菱重工業、KDDI、NEC、ホンダなどが取り入れている。厚生労働省の調査では導入率は約2%にとどまっており、同省は導入企業への助成などを通じ普及を後押しする方針だ。
◇残業抑制などに取り組む主な企業
▽神戸製鋼所 午後7時以降の残業を原則禁止
▽三井住友海上火災保険 午後7時以降の残業を原則禁止
▽大和証券グループ本社 午後7時前の退社奨励
▽大王製紙 午後7時までの退社奨励
▽あおぞら銀行 午後8時以降の残業を原則禁止し、8時以降の残業は役員の承認が必要
▽野村ホールディングス 午後8時までの退社奨励
▽アステラス製薬 毎週金曜日は午後4時退社を奨励。労働時間を短縮しても給与は減らない
▽日本生命保険 育児・介護支援で営業職に1日3時間半の勤務を4月導入
▽味の素 2020年度に所定労働時間を現在より35分短い7時間とし、賃金水準は据え置く
▽三菱重工業 7時間以上のインターバル制度導入
▽ユニ・チャーム 8時間以上のインターバル制度導入
▽KDDI 8時間以上のインターバル制度導入
▽NEC 9時間以上のインターバル制度導入
▽三井住友信託銀行 9時間以上のインターバル制度導入
▽TBCグループ 9時間以上のインターバル制度導入
▽ホンダ 本社勤務で12時間のインターバル制度導入
(2017/01/31-08:16)
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