就業不能保険は、 どこまで広がっているのか ー加入率17.2%。データから見える「備える世帯」と「保障の空白」
病気やケガで長期間働けなくなれば、収入は減少し、場合によっては途絶えます。住宅ローン、教育費、日々の生活費が続くなかで、世帯の主な稼ぎ手が働けなくなる影響は決して小さくありません。こうした収入減少に備える手段として、就業不能保険や就業不能保障特約への関心は高まっています。
目次
病気やケガで長期間働けなくなれば、収入は減少し、場合によっては途絶えます。住宅ローン、教育費、日々の生活費が続くなかで、世帯の主な稼ぎ手が働けなくなる影響は決して小さくありません。
こうした収入減少に備える手段として、就業不能保険や就業不能保障特約への関心は高まっています。ただし、実際の加入率を見ると、備えが十分に行き渡っているとは言い切れません。
本記事では、生命保険文化センターの調査データをもとに、年代、世帯年収、世帯主・配偶者の違いから、どの層で備えが進んでいるのかを読み解きます。
世帯加入率は12.0%から17.2%へ
生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、就業不能保険・就業不能保障特約の世帯加入率は17.2%でした。
2018年の12.0%と比べると、6年間で5.2ポイント上昇しています。働けなくなるリスクへの認識が広がり、保障を持つ世帯が増えていることが分かります。
2018年から5.2ポイント上昇。
主な収入源を担う人への保障が優先されています。
世帯主との差は8.5ポイントあります。
一方で、世帯加入率17.2%という数字は、加入世帯がまだ少数派であることも示しています。就業不能時の生活費を、預貯金や配偶者の収入、公的保障だけで支えられるのかを確認しないまま、保障の空白が残っている世帯も少なくないと考えられます。
世帯主に偏る保障。配偶者の収入は本当に代替できるか
世帯員別の加入率を見ると、世帯主が14.9%であるのに対し、配偶者は6.4%です。主な稼ぎ手である世帯主の保障が優先されるのは自然ですが、現在の家計は共働きを前提としているケースも増えています。
配偶者の収入が住宅ローン、教育費、日常生活費を支えている場合、その収入が失われた影響は小さくありません。家事や育児の担い手が就業不能となれば、外部サービスの利用や勤務時間の短縮によって、世帯全体の支出増加や収入減少につながることもあります。
加入率が最も高いのは30代前半
世帯主の年代別では、30~34歳の加入率が28.3%と最も高く、35~39歳も26.7%でした。30代は、住宅購入、出産、子育てなどをきっかけに、収入減少への備えを具体的に考え始める時期と重なります。
また、45~49歳は25.0%、50~54歳は25.5%で、30代から50代前半まで、おおむね4世帯に1世帯が加入しています。
| 世帯主の年齢 | 2024年 | 2018年 |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 20.3% | 26.2% |
| 30~34歳 | 28.3% | 18.5% |
| 35~39歳 | 26.7% | 20.9% |
| 40~44歳 | 22.7% | 21.3% |
| 45~49歳 | 25.0% | 18.5% |
| 50~54歳 | 25.5% | 21.1% |
| 55~59歳 | 20.8% | 11.8% |
| 60~64歳 | 12.8% | 10.4% |
| 65~69歳 | 7.4% | 5.0% |
| 70~74歳 | 4.7% | 3.4% |
| 75~79歳 | 4.0% | 4.5% |
目を引くのは、55~59歳の加入率が2018年の11.8%から2024年には20.8%へ上昇している点です。定年までの期間が短くても、住宅ローンや教育費が残っている世帯では、収入喪失への不安が強まっている可能性があります。
ただし、加入率が高い年代であっても3割には届いていません。現役世代の多くが必要性を感じながらも、実際の契約には至っていないことがうかがえます。
高年収世帯ほど加入率が高い
世帯年収別では、年収が高くなるほど加入率も高まる傾向があります。2024年の加入率は、年収500万円以上の層でおおむね19%を超え、1,000万円以上では24.6%でした。
| 世帯年収 | 2024年 | 2018年 |
|---|---|---|
| 200万円未満 | 10.4% | 5.2% |
| 200万~300万円未満 | 3.7% | 3.4% |
| 300万~400万円未満 | 11.5% | 6.5% |
| 400万~500万円未満 | 9.6% | 11.0% |
| 500万~600万円未満 | 18.9% | 12.0% |
| 600万~700万円未満 | 21.6% | 16.9% |
| 700万~1,000万円未満 | 22.3% | 17.5% |
| 1,000万円以上 | 24.6% | 19.5% |
高年収世帯は、保障に回せる保険料余力が比較的大きいことに加え、住宅ローンや教育費など、維持すべき生活水準が高い場合があります。そのため、収入を失った際の不足額も大きくなりやすく、保障の必要性を認識しやすいと考えられます。
反対に、低年収層ほど保険料負担が重く、加入したくても加入できない可能性があります。しかし、預貯金に余裕が少ない世帯ほど、収入減少に耐えられる期間は短くなります。
「今後増やしたい保障」は22.8%まで上昇
同調査では、今後数年のうちに増やしたい生活保障についても尋ねています。「世帯主が病気やケガで長期間働くことができなくなった場合の生活資金の準備」と回答した割合は、2018年の17.3%から、2021年には21.7%、2024年には22.8%へ上昇しました。
現在の加入率17.2%を上回る22.8%が、今後の備えを増やしたいと考えています。必要性は感じているものの、商品選択や保険料、支払要件の分かりにくさから、検討段階にとどまっている人がいることが考えられます。
加入率は、提案の根拠ではなく会話の入口
「加入率が上がっているから必要です」「同世代の4人に1人が入っています」といった説明は、関心を持ってもらうきっかけにはなります。しかし、加入率の高さだけで契約の必要性を判断することはできません。
就業不能時の不足額は、雇用形態、健康保険、勤務先の休職制度、傷病手当金、貯蓄、配偶者の収入によって大きく異なります。まずは家計が何カ月持ちこたえられるのかを確認することが先です。
- 就業不能時に受け取れる公的給付はいくらか
- 勤務先の休職制度や所得補償制度はあるか
- 預貯金で生活費を何カ月分まかなえるか
- 住宅ローンや教育費など、止めにくい支出はいくらか
- 配偶者が働き方を変える可能性はあるか
- 就業不能保険の支払要件が本人の想定と合っているか
必要性を伝えるなら「働けない後の暮らし」を具体化する
就業不能保険の必要性は、「病気やケガは誰にでも起こる」という一般論だけでは伝わりにくいものです。重要なのは、働けなくなった後に、家計の何が変わるのかを具体的に示すことです。
傷病手当金が終わった後、住宅ローンはどう払うのか。復職しても時短勤務で収入が下がった場合、教育費を維持できるのか。自営業者が数カ月仕事を休んだ場合、事業の固定費と生活費を同時に負担できるのか。こうした生活場面に置き換えることで、保障の役割が見えてきます。
しかし、17.2%という数字は、就業不能保障がまだ一部の世帯にとどまっていることも示しています。特に、配偶者や低所得世帯、自営業者など、保障の必要性がありながら備えが進みにくい層への説明が課題です。
データは不安を煽るためではなく、相談者自身の家計を考える入口として使うべきです。平均的な加入率を示したうえで、公的保障、勤務先制度、貯蓄、必要生活費を一つずつ確認する。そうした手順が、就業不能保障を「売るための数字」から「必要性を判断するための情報」へ変えていきます。
参考資料
- 公益財団法人 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。就業不能保険・就業不能保障特約の名称、保障内容、支払要件、免責期間、給付期間などは商品ごとに異なります。具体的な検討に際しては、各社の最新の約款、契約概要、注意喚起情報、パンフレットをご確認ください。
本記事は転載元の公式発表をもとに INSURANCE JOURNAL が掲載しています。掲載内容は公開時点の情報に基づきます。