【特集】 選ばれるのは、制度を知っている企業ではない。代理店の仕事を理解している企業だ。
ロ方式への一本化が、保険業界の周辺市場を大きく動かす理由2026年の保険業法改正を巡る議論の中で、「ハ方式の廃止」「ロ方式への一本化」という言葉を目にする機会が増えています。
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ロ方式への一本化が、保険業界の周辺市場を大きく動かす理由
2026年の保険業法改正を巡る議論の中で、「ハ方式の廃止」「ロ方式への一本化」という言葉を目にする機会が増えています。
制度改正として見れば、これは比較推奨販売の考え方を見直し、顧客の意向を起点とした商品選別をより明確に求めるためのルール変更です。しかし、この改正が現場にもたらす影響は、「販売方法が変わる」という一言では語り切れません。
編集部が代理店経営者、管理責任者、システムベンダーなどへの取材を通じて感じているのは、今回の改正によって本当に変わるのは募集プロセスそのものだということです。
そして、募集プロセスが変わるということは、その仕事を支える市場も変わることを意味します。
制度改正は代理店だけのテーマではありません。保険業界を支えるソフトウェア企業、AIベンダー、教育事業者、コンサルティング会社にとっても、市場構造が変わるタイミングが訪れようとしています。
ロ方式への一本化は、「比較推奨」の話では終わらない
ロ方式について語られる際、多くは「顧客意向に沿って商品を比較・推奨すること」が強調されます。もちろん、それは制度の重要なポイントです。
しかし、現場で仕事を分解してみると、本当に負荷がかかるのは商品比較そのものではありません。
例えば、顧客が「保険料を重視したい」と話した場合、募集人はその意向を確認し、複数の商品を比較し、提案を行います。この流れ自体は、多くの代理店で従来から行われてきた業務です。
問題は、その後です。
なぜその商品を選んだのか。
他の商品ではなく、その商品を推奨した理由は何か。
顧客意向と提案内容の整合性をどのように説明するのか。
その内容を誰が見ても確認できる形で残せているか。
制度改正によって求められるのは、単なる比較推奨ではなく、「説明可能な募集プロセス」です。
この考え方は、募集品質を個人の経験やスキルだけに依存するのではなく、組織として管理していくという近年の金融行政の流れとも重なります。
代理店が直面するのは、「情報を残す仕事」の増加
制度改正を歓迎するかどうかとは別に、多くの代理店が共通して感じているのは、実務の負荷です。
提案理由を記録する。
意向把握の内容を整理する。
面談記録を残す。
管理者が確認する。
教育へ反映する。
点検で検証する。
一つひとつの業務は新しいものではありません。しかし、それぞれを一定の品質で継続しようとすると、これまで以上に情報管理が重要になります。
実際、多くの代理店では顧客情報は代理店システム、教育履歴はExcel、点検結果は共有フォルダ、会議資料はメール添付というように、情報が複数の場所へ分散しています。
制度改正は、その分散した情報を一つの業務としてつなげることを求め始めています。
これはITの話ではありません。
仕事の設計の話です。
変わり始めているのは、代理店システムへの期待
この変化を最も敏感に感じ取っているのが、保険代理店向けサービスを提供する企業です。
これまで代理店システムは、契約管理や顧客管理を効率化するためのツールとして評価されることが多くありました。
しかし近年は、面談履歴、意向把握、募集記録、証跡管理、教育履歴、内部点検など、募集品質を支える情報を一元的に管理できるかどうかが、導入や見直しのポイントになりつつあります。
実際に、hokan®、AS-BOX、YouWill-CRMなどの保険代理店向けサービスでも、こうした領域への機能拡張が進んでいます。もちろん機能や設計思想は各サービスで異なりますが、市場が求めるテーマが「契約管理」から「募集品質の管理」へ広がっていることは共通しています。
興味深いのは、代理店が求めているのが「新しいシステム」ではないという点です。
「今ある情報をつなげたい。」
「管理者が状況を把握しやすくしたい。」
「募集人の負担を増やさずに品質を高めたい。」
こうした相談が増えていることは、多くのベンダーにも共通する実感ではないでしょうか。
AI市場にも、新しい役割が生まれる
生成AIも同じです。
一時期は「保険募集にAIをどう活用するか」が注目されました。しかし、現在の現場で聞こえてくるのは、もう少し地に足の着いた相談です。
議事録を整理したい。
社内通知を作成したい。
保険会社から届く大量の事務連絡を要約したい。
教育資料を作成したい。
こうした業務は、募集判断そのものではなく、募集を支える周辺業務です。
保険会社ごとの利用ルールや個人情報の取り扱いを踏まえる必要はありますが、「人の判断を支える仕事」をAIが補完するという考え方は、今後さらに広がる可能性があります。
ここでも重要なのは、「AIがあること」ではありません。
代理店の仕事を理解した上で、どこに組み込めば負担を減らせるかという設計力です。
市場が求め始めているのは、「製品」ではなく「業務理解」
編集部は、この制度改正を通じて一つの変化を感じています。
保険業界では長く、「保険業界は特殊だから」という言葉が使われてきました。
確かに募集業務には特殊性があります。
一方で、教育、情報共有、文書管理、ワークフロー、ナレッジ管理といった業務は、多くの業界が先に取り組んできたテーマでもあります。
だからこそ、これから保険業界へ提案する企業に求められるのは、「保険専用の機能」を増やすことだけではありません。
代理店の一日の仕事を理解し、その業務をどう改善できるかを提案することです。
ロ方式への対応を「制度対応」とだけ捉えれば、一過性の需要で終わるかもしれません。
しかし、「募集品質を継続的に支える仕組みづくり」と捉えれば、市場はもっと広がります。
代理店システム、CRM、AI、RPA、BI、eラーニング、文書管理、BPOなど、複数の市場が交わる接点が生まれているからです。
INSURANCE JOURNAL VIEW
制度改正は、法律を変えます。
しかし、本当に変わるのは法律ではありません。
現場の仕事です。
そして、現場の仕事が変わるとき、その仕事を支える企業にも新しい役割が生まれます。
これから評価されるのは、「保険業法を理解している企業」だけではありません。
代理店の管理者が何に困り、募集人がどこで時間を使い、どの情報が分断されているのか。その実務を理解し、改善の道筋を示せる企業です。
選ばれるのは、制度を知っている企業ではない。代理店の仕事を理解している企業だ。
今回の制度改正は、そのことを保険業界全体に問いかけているように見えます。
本記事は転載元の公式発表をもとに INSURANCE JOURNAL が掲載しています。掲載内容は公開時点の情報に基づきます。