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地震保険は、 家を建て直すための保険ではない  ー火災保険との違い、損害認定、請求の流れから考える「生活再建」の備え

地震保険は、 家を建て直すための保険ではない ー火災保険との違い、損害認定、請求の流れから考える「生活再建」の備え

大きな地震が起きるたびに、防災用品や避難経路とあわせて、地震保険への関心が高まります。しかし、地震保険を「地震で壊れた家を元どおりにするための保険」と理解していると、実際の補償との間に大きなずれが生じます。

目次
  1. 地震による火災は、通常の火災保険では補償されない
  2. 建物と家財は、別々に契約する
  3. 保険金額は、火災保険の30%から50%
  4. 支払額は「実際の修理費」ではなく4段階で決まる
  5. 外から見て無傷でも、請求対象になることがある
  6. 地震保険金を請求する流れ
  7. 単体型・震度連動型は、地震保険の代わりになるのか
  8. 保険の前に、地域の災害リスクを確認する
  9. 更新時の確認を、保険料の話だけで終わらせない
  10. 参考資料

大きな地震が起きるたびに、防災用品や避難経路とあわせて、地震保険への関心が高まります。しかし、地震保険を「地震で壊れた家を元どおりにするための保険」と理解していると、実際の補償との間に大きなずれが生じます。

地震保険の目的は、建物を完全に復旧することではなく、被災後の生活の安定に寄与することです。そのため、保険金額、損害認定、支払方法は、通常の火災保険とは異なる設計になっています。

地震保険は「原状回復のための保険」ではなく、「被災後の生活を立て直すための資金」を確保する保険です。

本記事では、火災保険との違い、建物と家財の分け方、4段階の損害認定、請求時のポイントを整理しながら、相談実務で何を確認すべきかを考えます。

地震による火災は、通常の火災保険では補償されない

地震保険は、地震・噴火、またはこれらによる津波を原因として、建物や家財に生じた損害を補償します。

注意したいのは、地震が原因で発生した火災や土砂崩れ、津波による損害は、通常の火災保険では原則として補償されないことです。火災保険に加入しているだけでは、地震を原因とする損害に十分対応できません。

火災保険

火災、風災、水災など、契約で定めた事故による建物・家財の損害を補償します。ただし、地震・噴火・津波を原因とする損害は原則として対象外です。

地震保険

地震・噴火・津波を原因とする火災、倒壊、埋没、流失などを補償します。原則として火災保険に付帯して契約します。

火災保険の契約時に地震保険へ加入しなかった場合でも、契約期間の途中から付帯できる場合があります。更新時だけでなく、現在の契約内容を確認することが重要です。

建物と家財は、別々に契約する

地震保険は、建物と家財を別々に契約します。建物の地震保険に加入していても、家財は自動的に補償されません。

例えば、地震による火災で建物と家具・家電が焼失した場合、建物だけの地震保険では、家財の損害に対する保険金は支払われません。家財の補償を受けるには、家財を対象とする火災保険と地震保険が必要です。

契約時に確認したい対象
  • 持ち家の建物に地震保険が付いているか
  • 家具、家電、衣類などの家財にも地震保険が付いているか
  • 賃貸住宅の場合、家財の火災保険に地震保険が付いているか
  • 店舗併用住宅などで、保険の対象外となる設備や商品がないか

賃貸住宅では建物の保険は所有者が契約しますが、入居者自身の家財は別です。「持ち家ではないから地震保険は不要」とは限りません。

保険金額は、火災保険の30%から50%

地震保険の保険金額は、付帯する火災保険の保険金額の30%から50%の範囲で設定します。さらに、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です。

つまり、火災保険で建物を2,000万円に設定していても、地震保険の保険金額は最大1,000万円です。全損となっても、建物の再建費用全額を地震保険だけでまかなう設計ではありません。

補償不足ではなく、制度の目的が違う地震保険は、住宅の完全な再建費用を補う制度ではありません。仮住まい、住宅ローン、生活必需品の購入など、被災後の生活再建資金として考える必要があります。

支払額は「実際の修理費」ではなく4段階で決まる

通常の火災保険では、実際の損害額を基に保険金が計算されるのが一般的です。一方、地震保険は、損害の程度を「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階に認定し、契約した地震保険金額の一定割合を支払います。

損害区分建物の主な認定イメージ支払割合
全損主要構造部の損害が建物時価の50%以上など100%
大半損主要構造部の損害が建物時価の40%以上50%未満など60%
小半損主要構造部の損害が建物時価の20%以上40%未満など30%
一部損主要構造部の損害が建物時価の3%以上20%未満など5%

家財も同様に、家財全体の時価に対する損害割合によって区分されます。個々の家具や家電の修理費を一つずつ積み上げる方式ではありません。

この仕組みは、大規模災害時に多数の保険金請求へ迅速に対応するためのものです。ただし、実際の修理費と支払保険金が一致しない場合があることは、契約時に説明しておく必要があります。

外から見て無傷でも、請求対象になることがある

地震後、建物の外観に大きな損傷が見えないため、保険会社へ連絡しない人もいます。しかし、基礎、柱、外壁、屋根などの主要構造部に、見えにくいひび割れや損傷が生じている場合があります。

地震保険の損害認定は専門的で、契約者自身が判断するのは困難です。「大した損害ではない」と自己判断せず、地震による損傷が疑われる場合は保険会社や代理店へ連絡することが重要です。

被災直後の写真を残す安全を確保したうえで、建物のひび、傾き、家財の転倒・破損、浸水状況などを撮影しておくと、後日の確認に役立ちます。片付けや修理を急ぐ場合も、可能な範囲で損害状況を記録します。

地震保険金を請求する流れ

地震保険の請求は、保険会社への事故連絡から始まります。大規模災害時は受付が集中しますが、損害が疑われる場合は早めに連絡します。

  1. 保険会社または代理店へ連絡する
    契約者名、証券番号、被害状況、連絡先などを伝えます。
  2. 安全を確保して損害を記録する
    写真や動画を残し、破損した家財を処分する場合は品目や状況を記録します。
  3. 損害調査に立ち会う
    調査員が建物や家財を確認し、損害区分を判定します。
  4. 認定内容を確認する
    調査結果と支払保険金について説明を受けます。
  5. 必要書類を提出し、保険金を受け取る
    大規模災害時には手続きが簡素化される場合もあります。

調査前に修理を行う必要がある場合は、事前に保険会社へ相談します。損害状況が確認できなくなると、認定が難しくなる可能性があります。

単体型・震度連動型は、地震保険の代わりになるのか

市場には、火災保険へ付帯する地震保険とは別に、少額短期保険や震度連動型の商品があります。建物の損害認定に応じて定額を支払うものや、一定の震度が観測された場合に保険金を支払うものなど、仕組みはさまざまです。

こうした商品は、仮住まい費用や当面の生活費を早期に確保する目的では有効な場合があります。ただし、政府と民間保険会社が共同で運営する地震保険とは、補償対象、支払条件、保険金額、保険料控除の扱いなどが異なります。

「地震保険」という名称だけで同じ商品と考えない単体型や震度連動型を検討するときは、何をきっかけに、いくら支払われるのかを確認します。従来の地震保険を補完する商品なのか、別目的の商品なのかを整理する必要があります。

保険の前に、地域の災害リスクを確認する

地震の被害は、建物の構造だけでなく、地盤、津波、液状化、土砂災害、周辺火災など、地域の条件によって変わります。

国土交通省のハザードマップポータルサイトや自治体の防災マップを使えば、想定震度、液状化、津波、土砂災害、避難場所などを確認できます。災害予測サービスや防災アプリも、発災後の情報収集や避難判断に役立ちます。

  • 自宅周辺の想定震度や地盤状況
  • 津波・液状化・土砂災害のリスク
  • 最寄りの避難所と避難経路
  • 家具の固定や感震ブレーカーの設置
  • 非常食、飲料水、携帯電源の備蓄
  • 家族との連絡方法と集合場所

更新時の確認を、保険料の話だけで終わらせない

火災保険の更新時には、保険料や保険期間の説明に意識が向きやすくなります。しかし、地震保険については、加入の有無だけでなく、建物・家財の両方に付いているか、保険金額が現在の生活実態に合っているかを確認する必要があります。

住宅ローン残高、家族構成、家財の増減、耐震改修、引っ越しなどによって、必要な備えは変わります。地震保険料控除の対象になることや、建物の免震・耐震性能によって割引を受けられる場合があることも確認したいポイントです。

地震保険の説明は、「入るか、入らないか」だけでは足りません。

火災保険では地震による損害が補償されないこと、建物と家財は別契約であること、保険金は4段階の損害認定で決まること。こうした制度の特徴を理解していなければ、被災後に「思っていた補償と違う」ということになりかねません。

地震保険は、住宅を完全に元どおりにするための保険ではありません。被災後の住まいと暮らしをどう立て直すか。そのために必要な資金を、預貯金、公的支援、地震保険、その他の備えでどう組み合わせるかを考えることが、災害への現実的な準備になります。

参考資料

  1. 財務省「地震保険制度の概要」
  2. 一般社団法人 日本損害保険協会「地震保険」
  3. 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
  4. 各損害保険会社・少額短期保険会社の商品案内

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。地震保険の保険金額、割引、損害認定、支払条件、単体型商品の内容などは、契約や商品によって異なります。具体的な検討に際しては、最新の約款、契約概要、注意喚起情報、各社の商品案内をご確認ください。

本記事は転載元の公式発表をもとに INSURANCE JOURNAL が掲載しています。掲載内容は公開時点の情報に基づきます。

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