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宮田三井住友FG社長インタビュー詳報

2016/12/22 株式会社 時事通信社
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三井住友フィナンシャルグループ(FG)の宮田孝一社長は時事通信のインタビューに応じ、グループ各社で重複している事務機能などの統合を検討する考えを明らかにした。主なやりとりは次の通り。  -来年の経済、経営環境の見通しは。  北米の景気は上向き、中国もボトムアウトした。日本も引き続きゆっくり成長しており、欧州は低位安定だ。全体として、来年はそれほど心配な経済状況ではない。ただ海外では、フランスやドイツの選挙などの政治イベントが相次ぐ。それが市場経由、あるいは顧客のビジネス経由でインパクトを与える可能性は意識している。  ビジネス環境のベースはいいが、イベントリスクへの備えが必要な時間帯が続くと思っている。来年は気を引き締め、どんどん(事業の)サイズを大きくするよりは、効率性を追求して純利益をどう確保するかを考えた方がいい。コストやクレジットリスクのコントロールを気にする年になると思う。  -「トランプ相場」が続く中、来年のマーケット展望は。  トランプ次期米大統領は財政支出や減税を掲げている。今までは金融政策がテーマだったが、景気対策に市場の関心がシフトした。しかし、財政支出や減税は大統領の権限ではなく、議会の承認事項だ。トランプ氏が言ってきたことの実現可能性をチェックする時簡帯に入る。保護主義を徹底すると、米の景気の足を引っ張るという要素もある。当面はボラティリティー(変動率)が高いマーケットが続くと思う。(変動の)引き金となるのは、経済情勢というよりは政治イベントなので、予測はものすごく難しい。われわれは債券投資のポジションが軽いので、金利が上昇すれば素直にビジネスにプラスに働くと思う。  -現行の中期経営計画の振り返りと、次期計画の考え方は。  (現行計画は)世界的に景気が上向き、もっと金利がある世界でビジネスをやるのが前提だったが、この3年で大きく変わった。次の3年は環境を保守的に見ておいた方がいい。資本をどう上手に使うか、保有資産の収益性をどう上げるかが大事だ。経費効率の面では、グループ会社を俯瞰(ふかん)的に見直し、重複している機能は統合できないか(考える)。リテール部門では、銀行や証券会社などがリアルな店舗を持っており、スペースの統合ができるのではないか。ダイナミックなコストコントロールをやろうとしている。これができれば、トップラインがそんなに伸びない計画を作っても、一定のボトムラインを確保できる。  -重複機能の統合は、グループ会社の間接部門が中心のイメージか。  総務、事務(部門)から入るのがやりやすいと思う。あるいはコールセンターだ。それぞれの会社の中でもやれることはあると思っている。空いたスペースに近くで間借りしているグループ会社を移せば、相当コストに切り込んでいけるはずだ。フィンテックで顧客は当然便利になるが、われわれにとっても省力効果がある。  -現在の経費率について。  すごく際だった優位性がある数字ではない。そこは気にしている。どういう時間軸にするかは分からないが、とにかく(経費を)減らしていくことは間違いなくやらないといけない。やれることを全部組み立て、どれぐらいの数字にできるか、次の中期経営計画で示したい。(経費率が)われわれを再評価してもらうための大きな要素だと思っている。  -店舗の統廃合についてはどうか。  ロングランではあるかもしれない。ただ、公的資金を注入された際は、収益を確保するために銀行が店舗をずいぶん減らし、顧客に迷惑をかけた。サービス低下にならないようなことがセットで必要だ。例えば、デジタルバンキングが進化すれば、ほとんどのことは店舗に来なくともできるようになる。リアルなキャッシュから、デビットカードなどのバーチャルなキャッシュに移ることも同時進行しないといけない。  -長い目で見れば統廃合もあり得るか。  統合というより店舗の軽量化というイメージだ。振り込みなど大半のことがデジタルの分野でできるようになる。新店舗はできるだけ軽量化して出そうとしている。しかし、重武装の店舗も必要だ。相続や資産承継など、直接顔を合わせて相談に乗った方がいいテーマも増加している。こういうことはデジタルでは絶対できない。重武装の店舗も残り、簡単なトランザクションに特化した店舗と混在するイメージを持っている。  -フィンテックの取り組みの方向性は。  いろんなアイデアがわれわれのところを通過するようにするため、提携や実験に取り組んでいる。全てが実を結ぶと思っているわけではない。この世界はトライ・アンド・エラーだ。銀行員の伝統的な考え方ではスピードが合わない。外部のベンチャー企業の方がいいアイデアを実用化していることがあり、連携していく。また、ITは銀行経営にも影響がある。カード会社も銀行も、内部に膨大なビッグデータがある。これがもっとビジネスに役立たないかすごく興味がある。フィンテックは事業の効率化とも関係する。現在、コールセンターで自己学習する人工知能(AI)を使っているが、相当育ってきた。(AIの補助を受けることで)将来的にはコールセンターの職員がマルチタレントになる。いくつかのグループ会社のコールセンターを統合できるかもしれない。  -端末はパソコンからスマートフォンへと変わり、モノのインターネット(IoT)も広がっている。  アイデアとして検討しているのは、例えばブレスレットや指輪のようなウェアラブル端末(を使ったサービス)だ。時計型が技術的には一番早いと思う。ただ、自前ではできないので、パートナーが必要だ。  -フィンテックでは、日銀もオープンイノべーションが重要だと言っている。  金融の世界に入ってくる異業種と戦うより、ウィンウィンの関係を作る。われわれにないノウハウを持っている人と組めばチャンスが増える。自前でやると時間もかかる。  -現行の中期経営計画は、海外戦略で「アジアセントリック」を掲げているが、今後も変わらないか。  「十年の計」は変える必要がないとの結論に達している。アジアは人口も中間層も増えていき、直接のビジネスチャンスがある。われわれの顧客もアジアで自分たちのビジネスを拡大するので、お手伝いすることもできる。ただ、中国経済がスローダウンしたこともあり、短期的にはアジアでのクレジットリスクに注意深くあらねばならない。この1年では、北米の貸出残高が最も増えた。次は欧州で、アジアは減っている。方針転換というよりは、足元のリスクに慎重になっていることの表れだ。  -アジアで重点を置く国は。  とりあえずはインドネシア、ベトナムだと思っている。インドネシアでは、出資先の銀行とデジタルバンキングの大きなプロモーションをやっている最中だ。この取り組みを、出資しているカンボジアの銀行も勉強にきている。今からリアルな店舗をアジアにどんどん増やしていくのは合理的ではない。出資している金融機関とノウハウを高め合い、ビジネスを拡大していく。東南アジアで横展開できる国がどこかというのが今の興味だ。(2016/12/22-09:45)

この記事の情報発信者

株式会社 時事通信社

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