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〔フィンテック最前線〕事業者の登録制を歓迎=インフキュリオンG丸山氏

2017/03/01 株式会社 時事通信社
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決済・金融コンサルティングのインフキュリオン・グループ(東京)の丸山弘毅代表取締役と傘下で自動貯金サービスを手掛けるネストエッグ(東京)の田村栄仁社長は、そろってインタビューに応じた。丸山氏は、顧客からの依頼に基づいて金融機関の口座情報を取得する業者の登録制導入を金融庁が進めていることについて「より良い制度になると期待している」と歓迎する意向を表明した。丸山氏は、業界団体「フィンテック協会」の代表理事も務めている。  一方、田村氏は昨年12月に提供を開始した貯金管理アプリ「fibee(フィンビー)」について、「5年後にダウンロード数で600万、アクティブユーザー数で250万を目指す」と語った。  主なやりとりは次の通り(インタビューは1月19日実施)。  -グループの概要は。  丸山氏 インフキュリオンは、もともと決済分野で新しいことをやるためにジェーシービー(JCB)にいたメンバーでつくった会社だ。コンセプトは、一般的なコンサルというよりは大企業の中に入って社内ベンチャーを一緒に立ち上げるビジネスだ。イノベーションを起こす方法として大企業とやるときはコンサルで、そうでないときには新規事業としてやる。金融的アプローチを少し離れて、ユーザー寄りのサービスをつくってみないといけないという課題意識があり、ネストエッグを立ち上げた。  田村氏 私はもともと銀行からネット企業に行って銀行をつくるプロジェクトをやっていた。「フィンテック」という言葉がない時代からテクノロジーを使って金融らしくない金融サービスをつくれないか模索してきた。貯金アプリは世の中にたくさんあるが、われわれは実際に金融機関の口座と連携して、自分のお金を「貯金箱」に入れて取り分けるサービスを昨年12月にスタートした。更新系API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)と呼んでいるが、金融機関の口座情報を書き換えて貯金用の口座に資金を移動することをアプリ経由で行うスキームは日本初だ。  コンセプトは「生活の貯金化」。気が付いたら金融サービスを使っているという世界観がどう出せないかが集約されている。貯金をすることが目的ではなく、何か欲しいとか、どこに行きたいという目的を達成するために、いくら、いつまで、どうやって貯金し、実際に購入するまでの流れをアプリ上で実現したい。  目的、金額、期日、貯金の方法を選べば、4ステップで一つの貯金がスタートする。貯金のルールとして、まず従来の金融機関にあるような自動積み立てのようなやり方ができる。2番目に「お釣り貯金」がある。カード利用情報と連携できるようになっており、今は住信SBIネット銀行が発行しているデビットカードを使うたびに、切りの良い金額に届かない端数をわれわれが計算して貯金している。今後クレジットカードにも対応する。  3番目に他のアプリとの連動も拡充していこうと考えている。第1弾としてiPhone(アイフォーン)の歩数を計測するアプリの情報を取得して、例えば一日一万歩を歩いたら500円貯金したり、逆に歩けなかったら自分への罰金として500円貯金したりという設定ができる。4番目は空き枠貯金で、毎月の支出を自分で決めて、そこに収まったら節約できた分を貯金に回すという設定ができる。この四つを自由に貯金の目的ごとにユーザーに設定してもらう。これらとは別に、たまたまお昼を抜いたから貯金するというようなこともできる。  また、貯金画面で、貯金の目的や達成率に応じて、いろいろなところからレコメンド(推奨)が来る機能を3月までに実装する予定だ。目的達成後にキャッシュバックするポイントを付けたり、目的に応じて商品を推薦したり、割引クーポンを案内したりする機能も付けようと考えている。貯金した後にいかに購入に結び付けるかをサービス購入先の会社と協議中だ。目標をシェアする機能も実装予定だ。例えば、夫婦で口座は別にあっても家具を買うという目的をシェアする。サークルの海外遠征費をみんなでためるという用途にも使える。当面は貯金から購入につなげるところに特化して、関連サービスとうまく連携を図りたい。具体的なユーザーの資金ニーズを把握した上で、不足があるようであれば金融機関からローンをレコメンドしたり個人財務管理(PFM)サービスと連携したり、ライフプランナーと連携して資産運用につなげたりと、われわれが企業との間をつなぐハブになるとどんどん世界観が広がっていく。  -API連携がサービスの前提になるのか。  田村氏 われわれの希望としては前提だが、全ての金融機関が更新系の対応ができているわけではないので、個々の金融機関の状況やタイミングに応じて個別に協議している。  -銀行ブランドで展開する可能性は。  田村氏 あくまで銀行ブランドで提供したいという金融機関もあるので、将来の対応として検討したい。  丸山氏 普段から使ってくれているロイヤルティー(忠実度)の高い顧客には金融機関ブランドでやりたいという要望がある一方で、給料が入って毎月1回ATM(現金自動預払機)で下ろすだけという人もかなりいる。フィンビーを生活アプリとして使ってもらいながら接点を持った方が良いということもある。両方実現したいという相談もある。  -金融審議会は、銀行にAPI開放を求める報告書をまとめた。口座の情報を取得する業者側も金融庁への登録が必要になる。  丸山氏 報告書自体は非常に歓迎している。内容を見る限り、登録制の要件もまっとうで、特段大きなハードルはない。銀行代理業との整合性で二重規制になる可能性も指摘されていたが、そこについても配慮する姿勢が示されており、より良い制度になると期待している。  -自動投資の機能を付ける考えは。  田村氏 少なくとも我々が投資商品を提供することはない。むしろ投資商品を買う手前の部分でわれわれの機能を使っていただきたい。まず10万円くらいためるユーザーが多いのではないかと考えて、とりあえず貯金を設けた。使う当てがない間は投資に回すということで他のサービスと連携することはあり得る。証券会社からも問い合わせをいただくケースが増えている。  -データの活用方法は。  丸山氏 決済データの場合、結果を並べて次に何を買うか予測しているが、相関はあっても因果関係は表していない。われわれの場合は、先にやろうとしている行動の正確性が時間とお金のたまり具合に合わせて変わってくるデータを手にしていく。決済データだけの分析より精度が高まる。その目的に向けて準備をしているかどうかまで分かるので、金融サービス的にも広告的にもおもしろいデータが取れる。  -中長期の目標は。  田村氏 5年後にダウンロード数で600万、アクティブユーザー数で250万を目指す。金融機関と連携しながらアクティブユーザーをどれくらいつかまえられるかに主眼を置いたマーケティングをする。  -収益源は。  田村氏 レコメンドや購入先との連携を含めた広告モデルが中心になる。  -ターゲット層は。  田村氏 貯金という行為自体は老若男女を問わず誰でもできるが、アプリをつくる上での想定ターゲットは、いろいろなライフイベントが今後起こるであろう「ミレニアル」と言われる世代だ。いたずらにお金を使うとか節約するとかではなく、絞るところは絞って、使うところは使うという消費性向を持っている世代をターゲットにしている。提携金融機関との交渉の中の一つのテーマとして、インターネットバンキングに慣れていないユーザーに提供するツールとしての引き合いも増えている。(2017/03/01-13:06)

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